僧侶のためのグリーフケア連続講座 関西クラス 第1講

僧侶のためのグリーフケア連続講座 関西クラス 第1講レポート
2019年11月22日に開催された、僧侶のためのグリーフケア連続講座の第1講のレポートを世話人の後藤順さんに書いていただきました!

筆者の後藤さん。

こんにちは。世話人の後藤順と申します。私は姫路市にあります真宗大谷派西勝寺の住職です。
2019年11月14日「僧侶のためのグリーフケア連続講座 関西クラス」がスタートしました。全6講+特別講の計7回講座で、会場は、大阪、京都兵庫(姫路)と広範囲にわたります。第一講は大阪市の太融寺をお借りしました。

関西クラスの受講生は17名で、内女性が4名と、これまでの講座より割合が高く、女性にも関心が高まっているようです。参加者は、福岡からの振替の方が1名あり、全員で15名でした。まずは、チェックインで「呼ばれたい名前」と「今日の調子」を短い時間で話し、自己紹介しました。

ファシリテーターの尾角さん

ファシリテーターを務めてくださるのは、てるみん(尾角光美さん)とごっちゃん(五藤 広海さん)のお二人です。
はじめに、てるみんからお話をいただきました。「ファシリテーターとは、場を過ごしやすくするため役割で、司会進行や講師もしますが、みなさんが学ぶ環境を整えるお役目です。
亡くしたことを本当に大切にしていく営みやつながりの場をたくさん経験する中で、自分がいただいたものをお返しして、グリーフケアが当たり前になる世の中にしたいなと思いました。
アメリカでは病院で、御遺族にグリーケアのパンフレットが当たり前のように配られます。教会では、親を亡くした子のキャンプがあります。誰かを亡くした時に、支えて当たり前につながる社会がアメリカにはある。でも日本にはないことがわかりました。

ところが、たくさんのお寺さんとのご縁ができて、日本仏教の中には、グリーフケアという言葉がない時から、グリーフケアの要素はもともとあって、亡き人を思い、大事に偲ぶ場をお寺さんがつくってきてくださったんだと感じています。
仏事や葬儀の本当の意味、意義といったところとグリーフケアとの重なり?(聞き取れませんでした)を大事にしていきたいと思ったので、宗派を超えて学べる場づくりをしてきました。」
と講座の生まれた背景と目的をお話してくださいました。

続いて、ごっちゃんから、
「岐阜県にある浄土真宗本願寺派「光蓮寺」の副住職です。ぼくは、中央仏教学院を出て、お寺に戻って現場に立った時に、これまでお坊さんになるための勉強・学びの中で、御遺族とどういうふうに触れるか、といった学びが全然なかったなと、現場に立った瞬間に思いました。これは、現場の中で培っていくものかとも思いましたが、はじめて高校生の男の子が自殺で亡くなったという葬儀に呼ばれたときに、凄い無力感に打ちひしがれました。その後、四十九日そして月参りもお願いされたので、続けてお参りさせていただきましたが、丸2年経ったときに、「申し訳ないですが、お参りに来てもらうたびに思い出して辛くなるので、月参りを終わりにさせてください」と言われました。

ファシリテーターの五藤さん

「何ができたんだろう。何が欠けていたんだろう、何が多かったのだろう、どういうことができたんだろう」という悩みに立った時に、ちょうど2015年に、てるみんの講演にであって、そこから、自分に欠けているものとか、自分の学びはここにあるのかもしれない、といったところから学びに入って、今はファシリテーターとして「いのちの学校」という講座の場づくりとかお手伝い。また、このようにいっしょにファシリテーターをさせていただいています。
と自己紹介とリヴオンとのご縁をお話してくださいました。

次に、てるみんから、この講座が何を目指しているのか。主催者側のゴールを示してくださいました。
全6回の講座を通じて、まず、一人ひとりが、自分の言葉で、グリーフについて、誰かを亡くした時に、何かを失う体験があった時、どんなことがあるのかを、わかりやすく伝える力を身につけていただく。
次に、ケアやサポートのベースに必要な「あり方」を養うことを大事にしています。みなさんスキルを身につけたい、できるようになっていきたいという思いをお持ちだと思いますが、私たちが一番大切にしているのは、あり方なんです。御遺族と向き合うときだけではなく、日々、家族が悩んでいる時にどう向き合うかなど、日々のあり方の中からケアにつながってくるのです。
最後に、お寺の現場や日常の中で、どんな取り組みができるのかを見つけられるような講座の内容になっています。
とゴールの内容を説明してくださいました。
では、第1講をご紹介いたします。

第1講は、グリーフケア・サポートの基礎で、「グリーフとは何かを知る」「死因や属性による課題の違いと必要なサポートを考える」知識を体感で学びました。体感とは、感覚として体の中に身につくようなワークをしていきました。
まず、グリーフの基礎知識の講義があって、「マイ・ゴール」(私の目標)のワークをしました。「この講座を通じて学びたいこと、得たいこと」を紙に書いて、受講者同士で伝え合いました。

私は「感情に良い悪いはない、どちらも大切に味わう。自分の心にも、相手の心にも、一歩踏み込む」と書きました。多くの受講者に伝えていく中で、書いた時の思いがどんどん膨らんで、もっと具体的に人や場面をイメージしながら、ワクワクして話していることに驚きました。ゴールを自分の中にしまっておくのではなく、人に伝えることで、どんな自分になりたいのか、自分の中にある思いに深く気づくことができ、ワークが終わった後には、書いた順番が逆転し、「自分の心にも、相手の心にも、一歩踏み込む。そのためには、感情に良い悪いはない、どちらも大切に味わう。」とゴールがはっきりしました。また、それぞれの受講者がどんな思いで参加しているのかを聞かせていただき、同じ方向性を持つ仲間の存在に心強い思いがしました。

次に、「違い」を知るワークショップを行いました。
4グループに分かれて、「病気でなくした人」「事故でなくした人」「自殺でなくした人」「親をなくした子ども(若者)」「子をなくした親」それぞれ、前半20分で「抱える困難、課題」を挙げ、後半15分で「それぞれのニーズと必要なケアサポート」を挙げ、模造紙に書いていきました。最後に、グループ毎に発表があり、質問やコメントがありました。

死因や属性によって、抱える困難、課題、ニーズ、支援が、共通するものもあるが、それぞれ違うものもあることを学びました。特に心理的な支援のみならず、経済的、教育的、法律的な支援が必要なこと等、私にとっては見落としていた面を学べました。
さらに、このたびの講座ならではの「僧侶だからできること」「お寺という場だからできること」を、自然にみんなで考えて、みんなで意見を出しあったところが大きな特徴でした。

「僧侶としてできること」として
・御遺族の相談に乗る。寄り添う。話を聞くだけでもOK。
・グリーフケアのできる僧侶の必要性
・グリーフの情報発信、情報提供
・相談できる窓口を増やし、選択肢を増やす(専門家、NPO、遺族会等とつながり、橋渡しする)
・死後の行方をはっきりさせる(自身の死生観をはっきりさせる)
「お寺という場だからできること」として
・安心して話せる場、分かち合いの場づくり
・家族を超えた家族(大家族)という場づくり
・子ども食堂(生活の支援)
などが挙げられました。僧侶・お寺の出番はたくさんあることに気づかされました
てるみんからのコメント「「寄り添う」とは「想像すること」何ができるか一緒に考えること」には、一歩踏み込んだ「寄り添う」あり方を教えていただきました。

最後に、チェックアウトで今日の感想を全員が短く話して、第一講を終えました。終始和やかな雰囲気で、てるみんとごっちゃんのファシリテイトが素晴らしく、受講者からも「アットホームな雰囲気で、とてもほっこりできました」との感想をいただきました。
この講座を終了したとき、どんな自分に変わっているのかをイメージして、ドキドキ、ワクワクしています。次の第2講が楽しみです。
このたび、不思議なご縁で世話人をさせていただいています。私にとって、リヴオンは、世俗空間に突如現れた奇跡の聖空間です。「とうとい、うれしい、ありがたい」であいに感謝しています。
合掌