2015年3月にある出会いがありました。
それは「名古屋の僧侶のためのグリーフケア連続講座」の最終回、
一般公開された学習発表の場「お寺からつながるグリーフケア」においてでした。
その場に、私のお寺との活動の原点である2010年に「グリーフサポート連続講座」を
石川県・小松で開催したときの発起人ご能邨ご住職が、本山(真宗大谷派)につとめる職員の速水さんを連れてきてくださったのです。
速水さんはのちに教育部の部長となられる方ですが、このときのことが縁となり、真宗大谷派の僧侶養成の中に「グリーフ」の学びが組み込まれることへとつながっていきました。
速水さんに先日お会いしたとき聞いてみました
「なぜ、グリーフの学びを取り入れたい、と思われたのですか」と。
「あのときの参加されてるみなさんの表情です」
と答えてくださいました。
学びを終えた僧侶たち、そしてそこに集ったお寺関係者や一般の人たち、その表情がみな、生き生きとしていたそうです。
速水さんの言葉で
「グリーフケアが当たり前にある教団にしたいです」
と後にいってくださったことは
今でも胸に刻まれています。
(※もちろんこれは一人の人の意志で決まったのではなく教団レベルの課題などの視点からの動きなど大きな文脈の流れもあります)
そして2017年11月にミーティングをはじめ、
はやもう今年で5年。
プログラム自体の開発と教科書の作成、
名古屋と九州の養成校での、モデル授業の実施、
そして先生方の研修、プログラムの見直しと教科書の再編集をし、やっと、今年の3月に研修を終え、5月から各学校での先生たちの授業がはじまりました。
講師による模擬授業の様子
教科書もそれに合わせて、必死の追い込み作業でありましたが、多くの方の力を借りて完成させることができました。
実際に出来上がった教科書『真宗僧侶とグリーフ』がこちらです。
表紙のデザインはリヴオンのWEBサイトをはじめ、出版物などで使用させていただいている藤井智子さんの水彩のイラストを起用しており、グリーフによって現れる多様な反応などを表現しています。
本書は、
第1章:グリーフの基礎」
第2章:「自分自身を知ること」と「自他を大切にすること」
第3章:「きく」と「対話」を学ぶ
第4章:僧侶×グリーフサポート
の全4章の構成となっています。
グリーフを知識として学ぶだけでなく、ワークなどを通して(僧侶自身が)自分自身のグリーフについて扱うことや、セルフケアの重要性を知ること、遺族との関わるためのあり方、様々なサポートの実践事例など、様々な角度からグリーフについて考える構成となっています。
また、第3章の後半ではグリーフに関連する学びとして「コミュニケーションの知識と実践」というテーマで、対話や言葉などのコミュニケーションの手法について掲載しています。このパートはリヴオンで多くの講座をともにしてきた表現教育家の岩橋由莉さんが執筆してくださいました。
全編にわたって、平元美沙緒さんの描き下ろした挿絵を使用して、大切なトピックや複雑な内容も理解しやすいような工夫をしたり、ワーク実施のための準備物や手順を掲載したり、脚注に細かい出典を掲載するなど、はじめてグリーフを学ぶ人からもっと深く学びたい方にとっても、学びが深い内容となっています。
実践的なワークもかなり盛り込んでいます。
この書籍、どうやって手に入るの?!と気になるところですが、どうか、今しばらくお待ち下さい。
今後、3年間をかけて真宗大谷派の養成校にてグリーフについての授業を実施した結果をふまえ、教科書としての内容や使いやすさなどのブラッシュアップをした後に、一般に販売される予定です。
2022年10月現在、すでに各学校で本書を用いた授業も始まっており、実際に授業を受けた学生からのアンケートなどを実施しています。
本書を通じて、これから僧侶になる皆さんをはじめ、教団や仏教界を通じて弔いの場に、グリーフの学びを生かしていただければ嬉しいです。
一般に販売されるのはもう少し先になりますが、その時にはぜひお手にとってもらえたら嬉しいなと思います。