【開催報告】日蓮宗埼玉青年会主催 ★青年僧のためのグリーフケア連続講座 第1講レポート

こんにちは。埼玉県日蓮宗青年会事務局長の内野義悠と申します。日頃は埼玉県新座市にある番星寺の修徒として勤めさせて頂いております。

 

このたび私たち埼玉県日蓮宗青年会はご縁を頂き、令和5年度の活動の軸として『青年僧のためのグリーフケア連続講座』を年間を通して開催する運びとなり、去る6月26日にその第1講が開かれました。

会場は川口市妙仙寺に隣接する仙太郎会館。当日は青年会員13名、サポートスタッフ2名、さらには寺庭婦人の方が1名の計16名の参加がありました。

今回この講座を進行してくださるのは、ファシリテーターの尾角光美さん(てるみん)と五藤広海さん(ごっちゃん)のお二人。

司会進行、講師といった役割だけではなく、積極的に受講生に話しかけてくれたり、時にはいっしょになってワークショップを行ってくれる「仲間」です。

そんなお二人に導かれてまず始めに行ったのは名札作り。参加者それぞれがこの講座内で「呼ばれたい名前」を紙に大きく書き、さらに自分のお寺の名前と所在地も記入。そしてその周りにファシリテーターのお二人が用意してくれたシールを思い思いに貼っていきました。

このシールの貼り方一つを見ても、受講者それぞれのセンスや個性が垣間見えて面白かったです。同じ僧侶の世界に身を置いていても、やはりその価値観は多様。これはそのままグリーフケアにも当てはまるのかなとも思いました。

名札が完成したところで、いよいよ講座がスタート。まずは「チェックイン」と呼ばれるアイスブレイクでお互いのコンディションを知り、さらに簡潔に自己紹介をすることでコミュニケーションを円滑にしていきます。

狙い通り笑顔も見られ、和やかな雰囲気が作られていきました。

その後は4名ずつの班に分かれ、まずてるみんから全7回の連続講座で大切にしたいこと(グラウンド・ルール)の紹介と概要の説明、そして「Goal」(願い・目指しているもの)の提示がありました。

当講座を終えたとき、グリーフを自分ごととして捉え、自分なりの形で自他のグリーフを大切にすることができるようになることや、グリーフケア/サポートの「知識」を得て「あり方」と「力」を養うことなどが目標に挙げられました。

そしてもちろん、受講生それぞれの現場や日常での取り組みや実践に繋げて活かすことなども。

また一方で、当講座を通じて受講者自身が学びたいこと、得たいことの目標を紙に書き出し、お互いにその理由を発表し合いました。ここでも各人グリーフケアに対して抱いているイメージが異なっているように感じ、大変興味深かったです。

ここからてるみんに示された「Goal」に向かって、その一歩目となる第1講が始まります。

第1講のメインテーマは「グリーフの基礎」。まずは「喪失」とは何かをより深く知るためのワークショップを行いました。自分がこれまで喪失を体験してきた「人、モノ、立場」などを班の中でお互いに語り合い、その時に生まれた感情を述べることで自らのグリーフを客観的に振り返りました。

このワークを通しては、初めて自分の喪失を言葉で相手に伝える機会を得て、自分のなかで消化できていなかった感情が整理されてゆくように感じました。

また、そのように自分を俯瞰で見られるようになればこそ、次に相手の喪失を聴くときには相手の気持ちに寄り添う余裕も生まれるような気がしました。

その後、喪失の種類や分類、グリーフとはなにかという定義や、グリーフのもたらす影響等の知識をスライドとレジュメを使って具体的に解説してもらいました。

ここで個人的に驚いたのは、喪失への反応としてネガティヴな感情ばかりをイメージしていたのに、「安心」や「無感情」などもグリーフに含まれるということです。それだけにグリーフのもたらす影響の細分化や、それぞれのケースに対応したグリーフケアの重要性などにも気づくことができました。

そして「失ったあとの反応やプロセスは、正常で自然なもの」ということを喪失者に伝える=「Grief is normal」という「寄り添う」グリーフケアの姿勢にとても感銘を受けました。

続いては「死別から生まれる課題」についての講義。ここでも今まで見ていたようで見落としていた課題が多くあることに気づきました。

どうしても「僧侶」という視点から死別を経験された方を見てしまいがちですが、そうすると法律的なことや経済的なこと、更には色々な意味での偏見など、極めて現実的な課題は見逃してしまいがちです。

しかしだからといって、そういった専門的なことまですべてをカバーして支える必要は無い。僧侶には僧侶なりの支え方(つなげる役割もある)をすれば良いという考え方は、実は喪失者だけでなく支える側の人間にとっても大切なことだなと思いました。

次に学んだのはグリーフに関する三つの言葉。その中のひとつ「グリーフワーク」に関連したワークショップを行いました。

班の中でペアを作り、お互いが喪失した大切な「モノ」について耳を傾けます。その後その「モノ」になりきって喪失者に語りかける。このワークを通じて相手のグリーフについて思いを馳せることができます。

実際、相手の喪失を真剣に聴き、その喪われた「モノ」の気持ちをも考えられると、その「モノ」に語りかけられた喪失者の中には涙ぐみそうになる人もいました。

ここでも相手の気持ちに「寄り添う」力の強さを実感したように思います。

その後、「グリーフから生まれてくるもの」というテーマを学ぶために、もう一つワークを行いました。

ここでは受講生自身が自らの喪失体験を振り返り、その経験があったからこそ得られた、生まれてきたと感じられるものを挙げていきます。

その結果、一見すると失う一方のように感じるグリーフにも、その後の人生の糧になるような側面が含まれていることが分かり、グリーフというものに本当の意味で向き合うには、さまざまな角度からそれを見つめる必要があることを学びました。

そして第1講の最後には、「大切な人をなくした人のための権利条約」の朗読を行いました。

この条約を読んでみると、今日ここまでに学んだグリーフケアの基本スタンスが集約されていることに気づかされます。

「決して無理はしない」「ありのままで」「急ぎすぎない」「相手に向き合いつつ寄り添う」など、現代社会で今まさに必要とされている姿勢が書かれており、これは僧侶としての在り方にも通底するものだと感じました。

 

そして第1講の締めはチェックアウト。

チェックインと同じくみんなで輪になって、今日一日グリーフケアの基礎を学んだ後の心身の変化を確認し合います。

受講生は総じてグリーフに対する意識の変化や、理解の深化、第2講への期待などを口にしていました。

私自身も同じ感想を抱いておりましたが、それは講義を聴く受講生の真剣な表情や場の熱気などからもひしひしと伝わって来ました。

このような環境が生まれたのも、受講生たち自身のモチベーションもさることながら、やはりてるみんとごっちゃんの周到な準備と的確なファシリテイトのおかげです。

ただの座学に終わらぬように絶妙なタイミングで設けられたワークは、知識をさらに体感的に吸収する上でとても有効だと感じました。

大きな刺激をもらい、明らかにこの3時間で多くのものを得た実感があった第1講だったので、次回以降の講座も非常に楽しみになりました。

てるみんの示してくれた「Goal」、そして自らの目指す「My Goal」に少しでも近づけるように、この先も青年会の仲間とともにグリーフケアの世界を一歩ずつ歩いて行きたいと思います。

てるみん、ごっちゃん、この先もよろしくお願いします。

合掌