こんにちは。秋山美智子 みっちゃんです。
私は四国・香川県 慈照寺の坊守(住職のパートナー)です。讃岐うどん案内するので食べにきてくださいね。今回は参加した第1回つどいばスタッフ研修会をレポートします。
【写真中右】秋山美智子さん
研修会場は直七法衣店さん。畳敷きの空間に、ふと目を横にすれば袈裟やミシン。この空間で縫子さんたちによって生み出されているのだなと、机も椅子もなんだか愛おしい。なんとも言えず落ち着く空間でした。ありがとうございます。
あゆみさんのファシリテーションで研修が始まりました。
チェックインは「呼ばれたいお名前、今の調子を5段階で表すと、ここにいる想い」の3つ。オンラインで会ったことはあってもリアルは初めての人、会うこと自体が初めての人、住んでいる地域も年代もバックグラウンドもさまざまなメンバーです。最初は少し緊張した雰囲気でしたが、あゆみさんの「ちょっと緊張しています」という声かけで、緊張しながらもゆるやかにほぐれていく雰囲気にホッとしました。
研修会の全体目的は、「グリーフに関する知識、プログラム、ワークの手法、自他のグリーフにふれ、実感して学び合うことを大切にしています。つどいばの参加者さんと一緒に場を作る“あり方”を養う場にしていき、仲間同士の関係を育むような研修会にしていきたい」とお話がありました。決して研修や講義という一方通行なものではなく、学び合いともに場を開いていきましょう、という気持ちが伝わってきました。
第1回目は「互いにつながり、団体とグリーフとつどいばの基礎を知る」
てるみんのファシリテーションで、まずはアイスブレーキング。緊張で凍った気持ちをほぐしていくことです。今回は共通点探しゲーム、互いに自分のことを伝え合う中で、共通する点を探っていきます。たまご焼きが好き、甘い派?しょっぱい派?おにぎりの具はしゃけが好き、梅雨が好きじゃないけどあじさいは好き、休みは家でのんびり派など、たくさんの共通点が見つかり、そこから会話と笑顔が広がりました。
さて、ここから基礎を知っていきます。
リヴオンのはじまり、母の日プロジェクト、実際にてるみんがかけられて嬉しかったことばや、いまここにある原点を改めて感じました。そして大事な「Live on」の由来。なくなった命、なき人との関係性、失ったものとつながり「生き続ける」ことです。忘れて立ち直らないといけないではなく、つながりながら大切に抱き続けることなのですね。
ビジョンや事業についての説明の中、印象に残った所を一つ。
階層(Tier)モデルとの出会いから「グリーフはノーマルなんだ」とまずは情報提供し、伝えることを大事にしています。そうですよね。私も大切な人をなくした直後の状態は、このモヤモヤする気持ち、苦しい悲しい、怒り・・・これって私だけ?おかしいのかな?と思って蓋をしていました。その気持ちはノーマルでおかしくないよ、と知ってからは、顔を上げることができる日もあったり、行ったり来たりしながらも、ようやく少しずつ歩みはじめたことを思い出しました。
まずは手に届くところに情報がある、ということが大切です。そこから「コロナ下で死別を経験したあなたへ」が発刊されるまでにいたったそうです。
リヴオンでは、Being(あること)、Doing(すること)両方を大切にしていて「支援する人」「支援される人」ではなく、その間に生まれていくもので、良い場をつくるぞ!と肩に力を入れなくても、場は参加者みんなでつくっていきます。しんどい思いしている時はなるべく早くヘルプをだす、それぞれ違っていてもままに自分が出せる、多様なそれぞれを尊重しあえる、と仲間同士でさまざまな願いを語りました。こうやって語り合えることがきっとともに場をつくっていくことにつながっていくのでしょうね。
リヴオンの文化についてのお話では、言葉を大切にして意識して紡ぐことです。例えば、ご遺体→○○さんのお体、ご遺族→ご家族。そう言われるとあっ!と思う言葉です。その場面や人により感じ方は違うかもしれないけれど、ある人にはあたたかな毛布になり、ある人にはナイフのように変わるのかもしれません。ひとつひとつ言葉の持つ力に敏感になることはとっても大事だなと思いました。
また、言葉にならないものも大切にしているということで、非言語の表現としてちーちゃんの絵が紹介されました。実際にその場で顔を合わせていませんが、絵の向こう側に人柄が見えるようなやわらかなイラストです。リヴオンの研修では資料の中でも度々登場して、見るだけで笑みがこぼれやさしい時間になり、余白があることが想像力となって、言葉以上のものが生まれていきます。
ここからグリーフの基礎。まずは参加者の失ったもの、人を書き出していきます。
けが、友人との関係、大切にしていた時計、ペット、思春期などの時期の喪失。見えるものだけではなくてグリーフの元となる経験は、人によりこんなにあるんだと驚きました。そのような喪失から生まれてくるものがグリーフで、そこにはさまざまな感情があります。
そこで、イロイロな感情ワークをみんなでやってみました。
「悲しい」「いとしい」「ズキズキ」「そわそわ」を、色鉛筆でそれぞれ表現します。形が違うけれど使っている色が同じだったり、言葉は違うけど形が似ていたり、同じ言葉でも全く形や色が違うことも。てるみんから、とてもわかりやすい話がありました。ナイフで手をざくっと切ると痛い!と思うけど、みんな同じ経験しているわけではなくて、小さな傷は経験したことがあって、そこからざくっと切るって痛いよねと感じることができる。それは、経験の違いがあったとしてもグリーフの共通性があって、必ずどこかでつながっていけるということ。もちろん個別性を大切にしていくことも必要で、同じ親をなくした兄弟であっても兄と弟では悲しみの色味も形も違うかもしれない、ということなのです。
ワークを通してみんなの意見を出し合うことで、グリーフは共通していることもあるし、違っていることもある、ということを肌で感じて、たくさんの気づきに出会いました。
乗り越えることはある?みなさんどうでしょう?
終わりがあるグリーフもあるだろうけど「時が経てば楽になる」「乗り越える」ばかりではありません。震災で子どもをなくしたお母さんは「悲しみを感じている間は子どもの存在を感じていられる」と言ったそうです。私も振り返るとそのような感情になることがあり、悲しみを感じている時間は大切な人とつながっているような気持ちで想いが重なりました。
リヴオンが大事にしている、喪失と回復の二重過程モデル。
「この間をゆらげている人の方が折り合いがつけやすい」この言葉がぴったりだなと思いました。喪失思考も回復思考も大事にしていくこと、そこから次の一歩を歩んで行きます。ゆらいでいいんですね。その中でもグリーフワーク(なくしたもの、ことを大切にする営み)が大事で、一緒に行ったラーメン屋さんに行ってみようかな、とか、水戸黄門が好きだったなとテレビ見たり、お墓参り行くことや手紙を書いてみたり、自分なりのグリーフワークを考えてみることも大切だと思いました。前述の冊子には書き込み式のグリーフワークもあって、言葉の表現が得意ではなくても穴埋め式でできるようになっているので書いてみようと思っています。
てるみんの話を、①嫌な聞き方②大切に聴くという2つの形で行ってみました。聴き方ひとつ、その姿で語りや感情は変わっていきます。てるみんも①の嫌な聞き方をされていた時はとてもつらく苦しそう。つい経験をあなたの方が「重い」と量り比べてしまうけど、重さをはかることはできません。そう思うことは自然だけど、もしその気持ちがわいてきたらジャッジを脇に置いておき、相手を尊重して大切に聴くことに戻ってくる、そう意識づけることの大切さに気づきました。
ここからセルフケアのお話。
ボディスキャンをしていきます。レントゲンをとるかのように、自分の身体を感じて頭からスキャンして、色や線、オノマトペで表現してみます。静かな空間の中で、重いところ、緊張しているところに手当てしていきます。自分自身の身体の変化に気づくことが、日常あまりにもできていないことを実感しました。あわただしい日々の中でも、ちょっと立ち止まって意識しながらセルフケアする時間も必要ですね。
「大切な人をなくした人のための権利条約」をひとりずつ第1条から読んでいきます。こうしてリレーしながら読んでいくと、ひとりじゃない、つながっていることを感じます。また、読んでいる声に耳を傾けると、読み終わった時にはあたたかなやさしい時間が流れていました。
あゆみさんの問いかけから、大切な人をなくした若者が、実際困っていること、傷つくことなどみんなで書き出していきました。頼れる人がいない、経済面、相手はよかれと思った言葉で傷つく、食べられない、友達と一緒に笑えない、周りからのプレッシャーなど、さまざまな話がでました。若者像を考え、どんな風に接したらいいのか、助けが必要なのかみんなで話し合う時間となりました。
てるみんから、分かち合いの会(ピア・サポート)についてのお話です。分かち合いの場は、喪失体験をした人たちがつどい、自分の経験や、感じていることを語り、他者のそれを聴く時間です。自分だけじゃなかった、誰かがいてくれるんだ、ここなら受けとめてもらえるという場があることがとても大事で、プライベートな話になることもあるためグラウンドルールにより安全性が守られていることが多くあります。
てるみんが参加した、国際的な親をなくした子どものキャンプでの出来事が心に残っています。親をなくした背景は9.11のテロ、アフガニスタン侵攻、病気とさまざまです。でも、そこから生まれるピアの力によって大きな平和への祈りが生まれたのだそうです。グリーフを種として豊かさや希望が生まれていき、グリーフをなくすのではなくてグリーフ自体に希望の種があるということを感じた瞬間でした。
最後に「大切な人を亡くした若者のつどいば」の話の中で、あゆみさんがつどいばに参加する想いを語ってくれました。つどいばにつながった経緯、心ゆれる想いがあった出会い、自分自身も語りたいものがある、という気づきに至るまでの話です。そして、参加をしてみて自分にとってあたたかい時間や場であったことや、育まれてきた何かが確かにあることを感じていて、安心して過ごせるような豊かな場をこれからも開いていきたいというメッセージがそこにこめられていて胸があつくなりました。
チェックアウトで今日の感想をそれぞれ語り、もりだくさんの研修1回目が終わりました。「はじめまして」で緊張していた中から始まった研修でしたが、終わる頃にはもうみんなと次まで会えないさみしさがポロポロとこぼれていました。人と人の温度を感じながら、ひとつの時間を共有して学び合えることってやっぱりいいなと思います。第2回に向けて振り返りながら、学びを通してつながれたことに心があたたかくなりました。