医療者のためのグリーフサポート講座の基礎講座の第二講が7月17日に開催されました。
第二講は「自分自身を知る セルフケア」をテーマとし、「医療者が自他を大切にするための土台となる自分自身を知ることとセルフケアについて学びを深める」ことを目的としています。
講座は二部制で、前半はてるみんの講義とワークでした。
「なぜ、医療者にとってセルフケアが重要であると思いますか?」
という問いに、グループで考えやおもいを共有することからスタートしました。
医療者にとってセルフケアが重要である「働く環境要因」と「心理的な要因」の解説では、それらの多くが、医療者個人で解決できるものではない難しさが示されました。
バーンアウト(燃え尽き症候群)への対処法の1位が「耐える」であるということを聞いた受講者の皆さんには、ご自身の経験を重ね、実感された方が多かったのではないでしょうか。
私は医療従事者ではありませんが、学生時代、医療機関でソーシャルワーカーの実習を受けていました。先日まで元気にお話ししていた患者さんが突然亡くなるというケースに直面すると酷く動揺し立ち止まってしまいましたが、「一人の患者さんにそんなに揺れていたらこの仕事は務まらない」「気持ちを切り替えなさい」「専門職としての意識が足りない」と言われたものでした。そして自分の弱さを責め、自分を何とか奮い立たせることに必死だったことを思い出しました。
30年以上経って、ケアする人のケアの必要性が以前よりも聞かれるようになってはいても、医療者が直面している現状には多くの課題が残されたままであることを知りました。
医療者にとって、自他を大切にするために「セルフケア」が重要であることは受講者の皆さんはすでに理解されていたと思います。
それでもセルフケアを十分におこなえないのはなぜなのか…
「自分に与えているケアの質が他者との間に生まれるケアにつながる」ことは医療過誤の原因などからも明らかでありながら、それを阻むものがあり、個人では力が及ばないことが多そうだ…ぐるぐると出口が見えなくなりそうになりながらも、何ができそうかをグループで話し合い、講座後半へと入っていきました。
後半は「医療現場におけるセルフケアの現実と実践」として、医療従事者3名(医師2名、看護師1名)からセルフケアの実践についてお話を聞きました。
うまくいかなかったことも率直にお話しいただき、どれもが実感がこもった具体的なものでした。
自責の念や無力感、仕事とプライベートの境界線を引けないことに悩まれていること、その中でも自分にとってのセルフケアを見つけ実践されていること、そしてセルフケアについてお話されている時の3名の表情がとても穏やかなことに勇気づけられました。
「自然の力に頼る」というセルフケアでは、自然の中で自分を知り、浄化され、力をもらうことをご紹介いただきましたが、自然豊かな環境に身を置くことができなくても、空を見上げたり、風を感じることでもできるとても身近でパワフルなセルフケアだと思いました。講座が終わった後に、早速窓を開け夜空を見上げ、講座を聞いている自分から、それを離れる自分へ移ることを試みました。
そして、3名のお話を受け、自分からなかなかSOSを出すことができないという受講者の方の感想から、セルフケアにチームや組織で取り組むことの大切さへと話題が広がりました。
「セルフケア」という言葉に、自分で取り組むことだと思い込んでいることに気付かされました。
誰かと一緒に、チームで、そして組織で扱っていくことでのセルフケアを阻む壁を壊していく可能性を感じました。
受講者の方からも以下の感想をお寄せいただきました。
「セルフケアを阻む壁」というテーマが、そのような視点で考えたことがなかった。
セルフケアが大切ですよというだけでなく、セルフケアするための
時間・人・場所があるような組織づくりが大切だと感じました。
「ままに」という言葉が一番印象に残っています。「ままに」をだせる関係を
つくることは中々難しいですが、「ままに」をだせる環境や泣ける環境が
今あるからこそ看護師として続けることが出来ているという体験が何度かあったため
自分の中で「ままに」いることがセルフケアになっているということを
納得することができ、一番印象に残っています。
次回の基礎講座第3講は「医療現場でできるサポート」がテーマです。基礎講座もいよいよ最終回を迎えます。
(記:リヴオン事務局 直井知枝)