【開催報告】8/21 医療者のためのグリーフサポート講座 基礎講座第3回

「医療者のためのグリーフサポート講座・基礎講座」の第三講が8月21日に開催されました。

チェックイン「今の自分の気持ちはどんな感じ?」から始まりました。
リヴオンが制作・販売しているセルフケアのクリアファイルにある「今日のいろんな気持ち日記」の絵を見ながら、それぞれ今感じている気持ちを置いていきました。
「ぽかぽか」「緊張」「楽しみ」「ねむい」「わくわく」・・色々な気持ちが出てきました。

第三講はいよいよ「医療現場でできるサポート」です。

最初に「医療者の実践に学ぶ」ということで、医療従事者3名(医師2名、看護師1名)からお話を聞きました。

①「自身の予後・余命に対して予期悲嘆を抱く患者さんにSHAREを活かして向き合う」
長岡西病院ビハーラ病棟の医師である今井洋介さんより、伝える際には格段の注意を要する「Significant news(重要な知らせ)」を伝えるスキルとして開発されたSHAREの紹介がありました。
SHAREはSupportive environment(サポーティブな環境設定)、How to deliver the bad news(悪い知らせの伝え方)、Additional information(付加的情報)、Reassurance and Emotional support(安心感と情緒的サポートの提供)の頭文字を取ったものです。
重要な知らせをどう伝えていけばいいのか、スキルというよりもあり方というものを教えてくださった気がしました。

②「医療者ができるサポート~遺族のグリーフワーク」
埼玉医科大学病院の緩和医療科の医師である岩瀬さんより、自身が実践しているライフ・リビュー・インタビューの紹介がありました。
ご遺族とともに過去の経験や思い出をともに振り返ることで、新しい意味付けをしていく手法で、その具体的な方法や事例をお話してくださいました。
ご遺族にとって有効なグリーフワークになっている実感を伝えてくださいました。

③「ご遺族とレモンジャムを食べた話」
がん看護専門看護師の丸山美香さんが実際に担当された患者さんとそのご家族と過ごした大切な時間についてお話してくださいました。
聞いているだけで、涙がじわじわ、じーんと胸が熱くなるお話でした。

私は医療従事者ではありませんが、患者や患者の家族の立場になることはたくさんあります。
昨年は義父の余命告知に立ち会い、また、その1週間後に自宅で義父を見送りました。
その時に先生がどんな表情で、どんな言葉で私たちや義父本人に告知したか、ありありと覚えています。
3名の方のお話を聞きながら、こんな風に患者と家族を大切に想って接してもらえたら、どれだけ幸せだろうと思いました。

次に「ご遺族の体験と想いをきく」として、お二人の方からお話を聞きました。

一人目にキャンサーネットジャパン理事である中井美穂さんより、今年お母さまを亡くされたご体験と想いを、二人目に寺中祥吾さんより、7年間の闘病の末、2年半前にパートナーを亡くされた時のご体験と想いをそれぞれ聞かせてくださいました。
お二人のご体験や想いをお聞きする中で、病気ではなくその人自身に関心を持ってもらえることに嬉しさを感じることや、たくさんいる患者の一人ではあるけれど、家族にとってはかけがえのない人で、大切に扱ってもらいたい、大切に説明してもらいたいという願いを持っているんだということが強く伝わってきました。

私は中学生の時から腎臓疾患があり、長い間、同じ病院へ通院していました。
大きな総合病院で診察までに数時間待つことも多かったのですが、そんな中で主治医の先生が「〇〇高校に入学。〇〇するのが好き。」等プライベートなことをカルテに書き込んでくれて、私の人間としての成長も見守ってくれていたこと、その時の先生の顔を久しぶりに思い出しました。

講義の最後はてるみんからの「必要とされているグリーフサポート」の時間でした。
イギリスの最良の実践ガイドライン「重大な知らせを伝える」や、死別を支える階層モデル(更に進化したレベル0が追加されたという情報)等、マクロな視点でのお話を聞かせていただきました。
四国こどもとおとなの医療センターの「青い花」プロジェクトの事例や、現在ともに作成中のグリーフカードの紹介もありました。

そして、講座の最後に、この講座全体を振返りながら、受講生の方の対話の時間「私にできる現場でのグリーフサポート」が持たれました。
「これから先、自分たち一人ひとりがグリーフを大切にするためにできる現場での実践、あり方はどのようなものだろうか」というテーマでグループに分かれて話し合いました。

チェックアウトは改めて、「今の自分の気持ちはどんな感じ?」で気持ちを出し合いました。
「もやもや」「皆様に感謝」「じーんとしてます」「現場での失敗を思い出して少し苦しさがあります」「がんばりました」・・また、色々な気持ちが出てきました。
3回の講座を通して、オンラインではありますが、横のつながりや一体感が生まれたように感じます。
講座のスタッフ側の医療従事者3名の方が「この講座で学ぶところがたくさんあった」と仰っていたのも印象的でした。
受講生の方々が、これから現場でひとつ二つでも、短時間でも、グリーフを大切にするために実践できることがあれば嬉しく思います。

最後に、受講生からの感想をご紹介させていただきます。

・中井さんと寺中さんの話が、患者側の率直な思いとして胸に響きました。医療者としてだけでなく、人として大切なことを気づかせてもらえました。
・患者家族とのかかわりであったり、大切な人を亡くされた経験をされている家族からの実際の思いを聞くことができてとても有意義な時間となりました。
・グリーフサポートを実践するのはとても難しく、今の環境だと無理なのではないかという先入観があったが、理論と照らし合わせてグリーフの考え方やサポートの方法を具体的に知ることで、自分にも組織でグリーフサポートを実践につなげるためにできることがあるのではないかと感じた。また、そのなかで自分と患者・ご家族との関わり方がその後のグリーフサポートに影響を与えるということを改めて考えさせられた。

臨床現場でより実践できるための「臨床実践講座」へと学びは続きます。また報告させていただきます。

(記:リヴオン事務局 但馬香里)